今回は、尿路結石の痛みを抑える方法を紹介する。
尿路結石の痛みにはそんなものない?
その通りかもしれぬ。
しかし、尿路結石複数回経験者である私には、例えば尿路結石友の会なるものがあったとして、その会員間の親睦を深めるために、5名程度のグループ分けがなされるのであれば、発汗量が増えて尿が濃縮されるため尿路結石ができやすい夏場に毎年のように戦っておられる主席の方の次くらいに位置する者として、先輩らしく多少エラそうに講釈を垂れなければならないという使命がある。
ここで気をつけなければならないのは、「先輩、タオルです♡」などと、愛らしい笑顔を見せてくれる年下マネージャーとの出会いがないところだ。
尿路結石では、突然に、背中から脇腹、下腹部に激痛が走る。
排尿後に残尿感が感じて、むむと下腹部を擦りながら気にしていると、とん、とん、と脈拍のテンポに合わせながら、単調な調べであったはずの不快な残尿感が、指揮者であるはずの私を無視して、徐々に、どおん、どおん、とハーモニーを奏で出す。
演奏者が指揮者のタクトを見ないという状況が理解できぬまま、残尿感のハーモニーは瞬く間におぞましく成長を遂げ、ぎゅんぎゅんと差し込むような激痛を発する。
私はそのあまりの痛みに耐えかねて自然と芋虫のようにうずくまる。
顔面には知らぬ間に脂汗ににじみ出ている。
残尿感は、暴走オーケストラと化し、指揮者不在のまま、ぐあらぐあらと、ボルテージを最高潮に上げていく。
ここで、初めてこの痛みに出会ってしまった者と、この痛みに過去に飲み込まれたことがある者との経験の差が生じる。
ベテランの者は、痛みの上限を体感で覚えている。
これ以上痛みは成長しないという一線を知っている。
だから激痛にうめきながらも、「考える」ことができる。
考えるべきは、この激痛をいかに自分の支配下に置くかだ。
激痛は、腎臓で製造してしまった結石が、尿管に落ちたときに起こる。
結石によって尿管が詰まり、尿の流れがせき止められて、腎臓に逆流して腎盂の内圧が高まることで生じる。
また、しばらくすると、腎臓は一時的に尿の産生を低下させ、内圧を下げるので痛みが収まる。
あるいは結石が移動して、隙間ができて尿が流れることで痛みが収まる。(出典:「尿路結石症」坂本善郎 株式会社法研)
痛みを支配下に置く方法のひとつが、ラマーズ法の呼吸法である。
そう、女性が出産時に行う呼吸法だ。
これは、「吸う」からスタートして「吐く」で終了する。
吸うのに1秒、吐くのに1秒、2回のヒッの後に長めにフーといきを吐く。
もちろん出産とは事態が異なるので気休めにもならないのかもしれないが、しかし、激痛の中で呼吸を一定のリズムとなるように心掛けることはと、意識の焦点を痛みから「ずらす」ことにつながる。暴走するオーケストラに取り乱すことなく、立ち向かう重要なファーストステップとなる。
そして、激痛の中で意識が保てるようになれば、立ち上がってジャンプをしながら結石の移動を促そう。
しかし、どうにも太刀打ちができない状況であれば迷わず座薬等を利用し、あるいは躊躇なく救急相談センター(#7119)か救急車(119)に連絡しよう。
次は座薬について話そう。