翌朝の検温は37.5度。
吐き気はない。
しかし前夜ほどではないが、右下腹部がずうんと痛い。
「よう、眠れんかった。」
「よく眠れているように見えましたけど」
という、隣のおじいさんと看護師さんの会話に癒される。
主治医の先生から、CTの画像を見ながら、今後の処置に関する説明を受けた。
選択肢として、
- 緊急で全身麻酔による虫垂切除手術を行う。
- 抗菌剤の点滴をこのまま継続し、経過観察を行う。俗に言う「ちらす」。
抗菌剤の点滴で数値は当初より改善してきているが、経過観察の場合、三割ほどは再発する。
今回はかなり腫れており、もし破裂したら腹膜炎を起こして重症化してしまうため、先生としてはこの後すぐ手術することを勧めるとのことだった。
「再発」
「重症化」
危険キーワードを並べられると、心身ともにヘタレの私はもうダメになる。
緊急手術を選択した。
ここで!
先生からのCT画像説明の際、たくさんの撮影スライドを見ていくのだが、先生から衝撃の発表がなされた。
「あ、腎臓に石がありますね。」
見ると、確かに我が腎臓に白く光るものが見える。。しかも左右に。
うそやん。うそやん。
愛しさと切なさと心強さのうち、切なさのみ数値が急上昇し、その場で卒倒しそうになった。
石、石、石があった、とつぶやきながら、動揺で震える手で手術同意書等に署名した。
そのまま手術着に着替え、よたよた生まれたばかりの子鹿のような足取りで手術室に入る。
テレビで見るような手術台に横になり、主治医の先生、麻酔の先生、看護師さん達に、か細い声で「宜しくお願いします」と挨拶した所までは覚えている。
その後は点滴による全身麻酔で、あっという間に意識がなくなった。